タイトル『子供で大人、山しんじろう』

                                                       

  

山しんじろうの「不良品のイキカタ」はこんな歌詞がある

「俺は学校が大嫌いだ

 集団も会社も大嫌いだ

 いい年したオヤジになっても」

 

山しんじろうは恵まれたものとはいえない幼少時代を送った。

病弱であったし、いじめられっこでもあった。幼い頃は忍耐の連続でもあり、コンプレックスの連続でもあった。

 

だから彼は13歳でペンという武器を手にして作詞・作曲を始めた。高校時代にはギターという更に精度の高い武器を手にとった。ペンとギターは彼の声なき抗議を、あらわにするための手段だった。山しんじろうはそれまで体に抱え込むだけだった鬱屈をメロディーという力に変えていく術を見つけたのだ。

 

それから彼は精神の旅と音楽の旅を共にした。彼は様々な所に行き、色々なものを見た。そして最後に彼の隣に住むあたたかい人々の所へ帰ってきて、また歌うことにしたのだ。彼の音楽は社会とのジレンマであり、大人になる彼自身のジレンマでもある。

 

山しんじろうの歌には「実直な目線」いうものが内包されている。彼と話をしていると感じることがある。山しんじろうは嘘をつかないだろうなということだ。誰にも偽りはあるだろうが、山しんじろうはきっと器用に自分自身を偽ることは出来ないだろうし、他人に対して器用に偽ることが出来ない。山しんじろうはそんな風に感じさせる人なのだ。山しんじろうは、時々空気を読まないだろうし、とんちんかんなことも言うだろう。だけど嘘はつかない。彼は色々なことを小器用に処理することの出来る人ではない。彼の小刻みに震える歌は全く等身大のソウルなのだ。

 

山しんじろうといえば、奇抜なスタイルが目を引く。ステージの照明の下で、彼は刺繍が施されたガウン(着物)を羽織り、はちまきを巻き、大きなイヤリングを耳にぶらさげて、十字のペンダントを首に下げている。自分なりのスタイルを追求した結果だという。

「汗かきなんでネクタイ大嫌い、スーツ堅苦しくて嫌いかと言って、ジーパンとTシャツでステージに立つのもなんか違う気がする。そうや、やっぱり日本人やから浴衣とか着物がええやん!あせかきやから汗止めとしてハチマキもしよう、 日常は地味な人間やから、ステージ上は楽しくきらびやかな弾ける場にしたい!」彼はステージに立つ時、ちょっとうきうきとした少年なのかもしれない。

 

山しんじろうは決して強い人間ではない。でも弱いものを踏みつける権力の姿を許さないし、お金や地位で着飾った虚色には惑わされない。

彼の歌「ぽっぽ」にはこんなフレーズがある

「政府はわしら貧乏人に死ね言うとる。それならいっそのこと毒入りだんごを配ってほしいわ。」山しんじろうの歌は一生懸命生きる庶民に彼が味方であることを伝える声であり、親しみ深い平成のブルース(労働者の歌)というべきものである。

 

さてアルバム「大人になる」はストーリー構成を持っています。

葛藤の中にある主人公が、いつしか恋人を得て強くなったり、時には社会の中で揉まれたりくじけたりしながら、それでも愛の力を獲得して歌っていくストーリーです。

 

以下に詳細を紹介します。

アルバム紹介「大人になる」

 

1「大人になる」

大人になることは何だろう?また大人となって生きていくことはどういうことを意味するのだろう?素朴な質問が鋭く聞こえるのはリスナーである私たちにどうにも耳が痛いところがあるからでしょうか。

 

2「買いだめダメだめブルース」

311日の東日本大震災について、山しんじろうが「買いだめをやめて、助け合おう」と呼びかける歌

 

3「不良品のイキカタ」

社会にツバを吐いてはみたものの、叫びはやっぱり苦しくて実は何かの助けを求めている。人は誰もデキソコナイ、どこからともなくそんな泣き声が聞こえてきそうです

 

4「冬の空のプレゼント」

5「君がケーキをつくってくれた」

そんな彼にも恋が訪れる。だけど恋もいつもうまく運ぶわけではない。恋の喜ばしさと、訪れる複雑さを歌詞に乗せています。

 

6「頭を下げる日々」

7「気合」

社会に出て遭遇するどうしようもない現実の困惑と、葛藤を描きます。

 

8「かくれんぼ」

92nd GEAR

社会から隠れてしまいたいような気分になったことも、いやなことばかり続いた日に誰とも会いたくなくなったこともある。でもギターを手にとって彼はこう歌います。「せっかく生まれてきたんだから、死んでしまうのはもったいない!生きようぜ!」

 

10「引越しの荷造り」

11「家」

12「たのしい我が家」

13「オヤジとアニキのブルース」

14「あいのうた」

 

大嫌いな集団や社会でもそんな中にも、好きな人ができて、好きになってくれる人ができた。好きな女の子ができて、好きになってくれる女の子ができた。それは山しんじろうが敬愛する忌野清志郎が歌っていた「突然の贈り物」と言えるものなのかも知れない。この幸せだけは失いたくない。戦争なんてなくなればいい。あぁ今まで生きてきて本当に良かった。

 

15ぽっぽ

16あせをかく(にゅるにゅる)

 山しんじろうが愛する人たちと一緒に歌います。愛する人々がしあわせになるために。「あせをかく」には地球温暖化反対、科学への警告が隠されています。

 

ファーストアルバムを経て、山しんじろうさんが今後どのような眼差しで大変な時代を見つめていかれるのか、その眼差しをわたしたちは彼の歌によって知ることが出来るでしょう。彼の生みだす次の新曲が楽しみです。

 

 

三名刺繍